(プロメテウスの罠)原発のごみ:3 供給も、後始末も
要旨:
モンゴルの青年レンスキーや大阪大准教授の今岡良子が懸念する「包括的燃料サービス」のシステム。その研究は日本でも進められていた。
東日本大震災が起きた2011年3月11日のまさにその日、核燃料サイクルについての多国間協力をテーマに、京都市の国立国際会館で国際会議が開かれていた。副題は「ゆりかごから墓場まで」。
核燃料の最初から最後まで。どう生産し、どう処分するか。多国間で何ができるのか考えようというのがねらいの会議だった。
東京大学大学院の原子力研究者でつくる国際保障学研究室が主催した。率いるのは同大学院教授で原子力学界の重鎮、田中知(たなかさとる)(63)だ。
会議には、モンゴルからの研究者も参加していた。07年にウランバートルに設立された研究機関「モンアメ科学研究センター」に所属する研究者だ。センターは原子力などエネルギーの研究が中心で、米国と強いつながりがあった。
国際会議の記録には、使用済み核燃料の引き受け条件についての出席者の発言が残っている。
「モンゴルが引き取るとすれば、モンゴル起源のウランでなければならない」
まさに「包括的燃料サービス」を意味する発言だった。
使用済み核燃料をどうするか。原子力発電を進める多くの国が、その処理に困っている。それだけに「後始末引き受けOK」は大きなセールスポイントになる。
たとえばロシア。燃料供給や使用済み核燃料の引き取りをパッケージにすることで、原発を海外に売り込んでいるとされる。
ロシアには広大な国土がある。しかし日本にそんな場所はない。
モンゴルがウラン輸出と引き換えに、使用済み核燃料を引き取る役目を引き受けたら日本の原子炉メーカーは原発を輸出しやすくなる――。日本の動きはそれがねらいなのではないかとレンスキーらは疑う。
京都の国際会議の終了直後、東日本大震災が起きた。東北から離れており揺れは小さかったが、各国からの参加者は、帰国便の確保などに追われた。
会議に参加した田中に会った。モンゴルの使用済み核燃料の引き取りについて尋ねるとこう答えた。
「国と国の信頼関係がないといけない。われわれがやっているのはアカデミックな研究で、すぐにできるとは思ってない」(小森敦司)
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【プロメテウス】人類に火を与えたギリシャ神話の神族
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