核廃棄物を処理する法的環境はすでに整っている B.ルハグワジャウ
「ウンデスニーソヨンボ運動」のB.ルハグワジャウ会長にインタビューした。同会長は、モンゴルで核廃棄物を処理するための法的環境はすでに整っていると考えている。
会長は「モンゴルで核廃棄物を処理するための法的環境はすでに整っている」とおっしゃいました。これについてお話しいただけませんか。
O.ボムヤラクチらは「モンゴルで核廃棄物を処理する」と言っています。「G.ザンダンシャタル外相が米国の代表と共にこの問題に係る協定に署名した」など、根拠を示しながら報道され始めています。海外のメディアでも「モンゴルに核廃棄物を埋設しようとしている」と報道されています。そこで、私は一体どうしてこのような話が出てきたのか。そのような協定に署名するに至った経緯を明らかにしようと、わが国の法律を調べ始めたのです。
どのような結果が出ましたか。
法的にどんな状況なのかについて調べました。すると、ずっと以前に核廃棄物をモンゴルで処理する法的環境は整備されていたのです。簡単に言えば、国会第56号決議(1994年6月30日付)により承認された「国家安全保障基本方針」を国会第48号決議(2010年7月15日付)によって修正しています。これによって修正前の「基本方針」にあった重要事項を削除してしまったのです。「基本方針」(1994年)第51条「人および遺伝資源の安全を守る方法」の51.4に「隣国との国境地帯にある放射性・化学汚染・生物学的に有害な細菌汚染、それらを原因とする疾病を予防する管理システムを整備する」、51.5には「遺伝子や健康に直接または後遺症を残す有害な化学および生物起源の物質をモンゴルの領土内に持ち込む、経由する、外国の廃棄物を埋設する、加工する事業を禁ずる」との条項がありました。また、第54条「環境保全に悪影響を及ぼす国内の諸要因」の54.3に「天然資源を選り分ける、収奪する形で利用する」、54.4に「大量の廃棄物を出す技術が集積され、有害な廃棄物を出す産業が集中する、外国の有害な廃棄物を処理する場所になる」という条項がありました。ところが、2010年の「基本方針」にはこれらは全く盛り込まれていません。
上の条項をそっくり削除してしまったということですか。
その通りです。そればかりか、モンゴルで核廃棄物を処理できるようにした条項を2010年の「基本方針」では付加しています。この「基本方針」の3.2.4.4に「核エネルギー分野を国益および平和目的で利用するという原則で発展させる。核燃料サイクルを開発し、放射性資源の利用・加工、転換・濃縮、エネルギー生産を開始し強化する」、3.5.4.3に「廃棄物からエネルギー・資源・原料を取り出す技術を有する産業を政策的に支援する。危険な廃棄物の管理を改善し、有毒・危険な廃棄物が集積するのを防止する」、3.5.4.5に「化学的に有害・危険な物質、生物起源の物質、イオン化放射性物質、核原料物質に関係する事業を調整するための法的環境を改善し、管理能力を強化する」という条項を加えたのです。国家安全保障基本方針というものは、いかなる国においても「安全であること」が主たる内容になっているのが普通です。ところが、この条文にあった「モンゴル国に核廃棄物を持ち込ませない」という条項を削除したことをどのように理解したらいいのでしょう。
会長はどのようにお考えですか。
わかりきったことです。ザンダンシャタル外相は2010年、「基本方針」が承認された1か月後に米国政府の代表と共に覚書に署名しているのです。そのように慌てて行ったことは大変奇妙です。もしその覚書に署名する必要があったのなら、わが国には安全保障基本方針がすでにありました。しかも、それは国益を守る基本方針だったのです。にもかかわらず、核廃棄物を処理するための抜け道をつくって米国と覚書に署名したことで、疑惑がわいてきます。また、これについて海外のメディアも報道し続けています。疑いをもつ別の理由として、2010年7月15日の国会では、極めて重要な公文書が初めの審議のたった数分間のうちに承認されてしまいました。国会議員はこの問題にどの程度注目して審議したのか定かではありません。
それでは、モンゴルで核廃棄物を処理することができるようになったのですね。これを禁止するほかの法律はないのでしょうか。
今のところ、2000年10月3日に承認された「危険な廃棄物の輸入、国内の輸送の禁止、輸出に関して」という法律の唯一の条項が核廃棄物をモンゴルで処理する問題に罰金を科しています。それはこの法律の4.1に「危険な廃棄物の利用・保管・一時保管・処分するため、モンゴル国に輸入することを禁ずる」、4.2に「危険な廃棄物をモンゴルの国境を越えて輸送することを禁ずる」という条項です。しかしながら、これらの条項は、私たちが知らないうちになくなってしまうかも知れません。立法府や権力者の行為を見れば、なくなる可能性は高いと言えるでしょう。
核廃棄物はすでにモンゴルに埋設されてしまっているのではないのでしょうか。経済的には非常に大きな意味があると言われています。
それは作り話でしょう。そんなことはないと思います。諸外国はモンゴルで核廃棄物を処理することに関心をもっており、何でも約束するでしょう。しかしながら、核廃棄物は非常に危険です。一言で言うなら、モンゴルに核廃棄物の保管施設を建設するということです。保管の手順を少し誤れば、(安全だと言っていた)全てが逆に動き出します。このことは誰もがわかっていることでしょう。国の安全保障のために声を上げたり闘ったりする人を全く反対の立場にいるかのように見せかけるような状況がわが国にはこれまでずっとありました。声を上げる人々に対して「全くの無駄な政治活動まがいだ」などと無視するのです。
O.ボムヤラクチ氏らのことをおっしゃっているのですか。
彼も、核廃棄物の処理に反対している人々をそのように見せかけようとしています。最も大切なことは、核廃棄物を処理するための法的環境を整える作業は3~4年前から組織的に行われてきたことが明らかなことです。全てをあからさまに言ってしまうと、「無駄な政治活動まがい」に結びつけられてつぶされます。1997年、鉱物資源法がどのように成立したか思い出してみて下さい。故O.ダシバルバル氏はたった一人でこの法律に反対していました。氏は「ライセンスという紙切れで祖国を売ったりしないぞ」と主張していました。当時は彼を気でも狂ったかのように国民に見せかけることが意図的に行われていました。ところが、彼が亡くなった後、何のために闘っていたのか、みんなが理解するようになりました。今の状況を見て下さい。モンゴルの領土の大部分は「ライセンス」という名で外国人の手に渡ってしまいました。これはモンゴルの悲惨な歴史です。
それでは、どうすべきなのでしょうか
国民が国益を守っていくべきです。その意味で私はこの問題を調べたのです。法的には核廃棄物をモンゴルで処理する抜け道はすでに開かれています。私は、モンゴル国家安全保障委員会委員長であるTs.エルベグドルジ大統領に貴紙を通じて質問状を送ってあります。偶然にこういうことになったのか。あるいは、組織的にこういうことが行われているのか。これについて回答をもらいたいと思っています。
Shuud.mn(2011年9月6日付)