使用済み核燃料:米有識者委が報告書 対策急ぐよう提言
【ロンドン会川晴之】
米国の使用済み核燃料の処分方法を検討するためオバマ大統領が設置した有識者委員会(ブルーリボン委員会)は29日、中間報告をまとめ、地下深層の最終処分場ができるまで最大で100年間、一時的に使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の建設を求めた。また、少なくとも1カ所の最終処分地選定を進める専門機関の設置を求め、選定にあたっては、地元の理解を得るため「透明性が重要」と明記し、情報公開を求めた。多国間で管理する施設の建設も検討するよう提言した。
報告書は、3月の福島第1原発事故を受け、原発に保管されている使用済み核燃料の安全性について「かつてないほど米国民の関心が高まっている」と指摘し、対策を急ぐよう求めた。
世界最大の104基の原発が稼働する米国では、年間2000~2400トンの使用済み核燃料が発生、すでに計6万5000トンに達している。50年には15万~20万トンに達する可能性がある。しかし、オバマ大統領が09年、地元の反対を理由にネバダ州ユッカマウンテンの最終処分地計画を白紙撤回し、新たな処分地の見通しは立っていない。
このため報告書は、現在は原発に保管されている使用済み核燃料について、新設する中間貯蔵施設へ移送し、原発の運転に支障が起きない措置を取るよう求めた。
一方、核不拡散対策強化のため、核兵器保有国が中心になって、核兵器転用につながるウラン濃縮や核燃料再処理を共同管理する構想が進んでいることを踏まえ、「同様の手法を使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物にも適用することは可能」と指摘。複数の国による共同管理施設や、国際機関が管理する施設の建設も検討課題に挙げた。
米エネルギー省は、日本、アラブ首長国連邦とともに、モンゴルに中間貯蔵・最終処分施設を建設し、国際原子力機関(IAEA)が管理する計画を進めているが、報告書はこの計画については触れていない。
毎日新聞 2011年7月31日 20時26分
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